初めての東京③~初めてのナンパ~

上京して2週間、かねてよりやりたかったアレをすることにしました。

 

僕は毎週Jリーグを欠かさず見るサッカーファンです。

一時期は試合を録画し戦術を分析したサッカーノートを作るなどしていました。

特にFC東京というチームが好きで、鳥取県にいた頃から応援していました。

もう東京に来たからには実際に味の素スタジアムで観戦するしかないでしょう!!!!

  

でもチケットの買い方がわからないよ・・・。

とりあえず公式サイトを見てみるとスタジアムで当日券の販売をするらしい。

よし、これだ!

 

16時から当日券販売開始だったけど気がはやり過ぎて午前11時に味の素スタジアム最寄の飛田給駅に到着。

スタジアムまでの通りにはチームの旗が掲げてあったりしてまさにホームタウン。

オーオー東京~ヴァモス東京~♪

気分が上がってきます。

 

12時過ぎに味の素スタジアムに到着。

綺麗で大きくて感動しました。

 

やることもないのでとりあえずチケット売り場に向かう。

到着するもまだ誰もいない…。

だが油断はできない!!

これまで散々東京の人の多さを見てきた!!

隙を見せたらどこからか人が湧いてきて長蛇の列になってチケット売り切れなんてことがあるかもしれない!!

そこに居続けることにしましたが、小雨が降っているので、近くの屋根のある場所まで移動。

販売開始の16時までひたすら待つぞ。

 

ひたすら待っていたら、一人の女の子が僕の向かいの場所に来ました。

僕と同じく当日券販売を待っていて、雨宿りでここにきたのでしょう。この辺りで雨を凌げる場所はここしかないからね、わかる。

女の子は制服姿で茶髪、身長は僕(160㎝)より少し低いくらいで、濡れた髪をタオルで拭いていました。

そのまま時間が経つのだけど、そんなに広い場所じゃないし、その女の子との距離がわずか2メートルほどで逆に気まずくなっていたので思い切って話しかけました。

 

 

「君も当日券待ってるの??」

「はい、そうですよ。」

「一緒一緒!どっち応援してるの?FC東京セレッソ?」

「東京です!」

「よかったー!話しかけたは言いけどセレッソサポだったら気まずさに耐えられなかったよ。FC東京良いよね。俺は初めての観戦なんだけど、特に今野が凄く好きでその動きをを見られると思うとワクワクが止まらないよ。」

「ホントですか!!私も今ちゃんが凄く好きで、私も初めての観戦なんですよー!一緒ですねー。」

 

話が盛り上がり意気投合。

そのまま一緒に観戦することになりました。

当日券販売、試合開始までまだ数時間あったけれどその子とお喋りをしていたらあっという間でした。

女の子の名前がアカネ(仮名)だと言うこと、高校2年生だということ、今日は学校が午前で終わったので思い立って来てみたということ、町田という場所からやってきたということ、海外サッカーなども見るガチのサッカーファンだということ。

沢山沢山お話をしました。

 

そして試合開始。

圧巻のスタジアムの迫力に飲み込まれる。

試合をアカネと一緒に一喜一憂しながら楽しみました。

チャンスに盛り上がり、ピンチにハラハラし、得点が決まればハイタッチをして、失点すれば一緒に凹んで凄く楽しかった。

試合は引き分けに終わりました。

初めての現地でのサッカー観戦がまさかこんな風になるなんて。

 

試合終了後、新宿経由で町田に帰るということだったので、僕も新宿までついていきました。

二人ともお腹がすいていたので新宿で何かを食べて帰ろうということに。

 

しかーし、まだまだ東京初心者の僕は新宿に何があるのかわからない・・・。

それに飲食店だらけでどこを選べばいいかわからない!

これが地元なら飲食店の選択肢なんてほとんどないから迷わないのに!!!

迷いに迷った挙句、松屋を選択しました。

当時の僕はまだ松屋を知らなかったし、なんだか入りやすそうだし、ファミレスみたいな場所かなと思ったのです。

女子を連れて行くにはどんな店がいいかなんて発想は齢18の僕には、まだない。

アカネがこれに対してどんなリアクションをしていたのかは全く覚えていない。

 

美味しく牛めしを頂いてからアカネと一緒に夜の新宿を歩いていました。

あれは多分新宿駅東南口の辺りでしょうか、アカネが右手を開いて僕に差し出してきました。

そのまま手を繋いで一緒に歩く。

夜でもキラキラした大都会のど真ん中を女の子と手を繋ぎながら歩いてるなんて・・・。

先月まで田んぼと畑と山と海しかないような場所にいたのに。なんだこれは。東京ってのはやばいな。

 

そのまま20分ほど歩いた後、アカネが「そろそろ帰らないと」と言いました。

そうか、寂しいな。楽しかったな。夢みたいな時間だったな。

と名残惜しい気持ちになっていたら続けてアカネがこう言いました。

 

 

 

「ねえ、最後にキスして」

 

 

 

ドクンと心臓が脈打ち、通りの物陰に隠れ、アカネの頭に右手を伸ばし、くちづけをしました。

少しの間沈黙した後、二人で見合って笑いました。

 

「今日、初めて会ったのにね」

「ね。」

 

齢18で東京初心者でウブな僕です。

その後どうこうしようなんて考えもなく、そのままアカネを見送って帰宅しました。

連絡先を交換するのを忘れていたのでそれっきり会えなくなってしまいました。

 

東京ってのはやばいな!

出会いがゴロゴロあるってのは本当だったのか!

と思ったけれど、それ以来そんな出会い方をしたことはない。

 

今の僕の理想の出会い方が

「一人旅で海を見ていたら、近くで同じように海を眺めている人がいて、どちらからともなく話しかけ意気投合する」

というものだけど、この日の幻影を追いかけているのかもしれません。

 

今でもFC東京は好きでスタジアムに応援にいきます。

もう今野選手はいないけれど。(2012年にガンバ大阪に移籍)、

ひょっとしたらどこかにアカネがいるんじゃないかとついつい周りを見渡してしまいます。

あれから10年経って26歳になってるし、いたとしても気付かないかな。

 

今も同じ空の下でどこかで元気にしてるのかな。

結婚してたりするのかな。僕のこと覚えてるかな。

エモい夜をありがとう。