2017年2月 西伊豆一人旅
■2月12日
新宿の喫茶店でモーニングを食べる。向かいに座っていた人のセットにはウインナーがついていたが、僕のセットにはついていなかった 。悔しい。しかしダイエット中の身である、これでいいのだ。
10時頃、喫茶店を出て品川へ向かい、新幹線に乗り込む。目的地は修善寺だ。
新幹線の中で「レオナルドのユダ」服部まゆみ を読む。登場人物の名前がなかなか覚えられなくて悪戦苦闘していたが、読み始めたらその優雅な世界観に魅了されてしまった。
三島駅で新幹線を降りる。駅のホームからは富士山がとても綺麗に見えた。
ここで伊豆箱根鉄道に乗り換える。この路線ではICOCAが使えないという誤算が発生する。1万円チャージしてきたのに悲しきこと。
そのまま電車に揺られ13時頃に修善寺に到着。13時5分のバスに一目散に向かい、飛び乗る。バスに揺られながら修善寺の豊かな緑を眺める。40分ほどで降りる。が。
・・・降りる所を間違えた!!
萬城の滝まで徒歩5分のバス停で降りるはずが、全く違う場所で降りてしまった。Google Map(以後グーマ)を見るとどうやら徒歩1時間離れた場所のようだ。しかし、僕にとっての一人旅とは、遠い場所で行うお散歩なのだから別に構わないか。山あいの見晴らしのいい場所で景色が最高だ。快晴で、空気がとても気持ち良い。間違えて降りるのも悪くないな。
それからグーマを見つつ1時間歩き、土木作業の機械が立ち並んでいる所まで歩いたところで、グーマが目的地到着をお知らせした。
・・・いやいや!!・・・明らかに!!・・・いやいや!!
確かに滝の落ちる轟音は聞こえる。だがここには木と土木作業の機械しかない。グーマをよく見てみると、ここからUの字の反対側に萬城の滝があるらしい。してやられた。以前にもナビを使って旅館に向かっていたのに民家に誘導されたことがある。グーマは時々悪戯をする。名前で検索するよりもきちんと住所を入力するほうが無難か。
そこから30分歩き、今度こそ萬城の滝に到着。滝の迫力と、滝つぼの美しさに魅了される。何故滝はこんなにも心を潤すのだろうか。
さて。誤算が続いたせいで予定が大幅に遅れている。速やかに修善寺に戻らねば。徒歩5分で着くバス停に向かい時刻表を確認する。次のバスは2時間後。2時間後?2時間後か・・・。
グーマで確認したところ、修善寺まで歩くと3時間弱かかるらしい。とりあえず行けるところまで歩いて、疲れたらバス停でバスを待つことにした。
そうして17時過ぎに修善寺戻った。駅周りの観光もしたかったが、夕日を見るために一刻も早く西伊豆に向かわねばならなかった。伊豆箱根鉄道は修善寺が終点である。よって西伊豆方面にはバスかタクシーを使うことになる。僕はバスで土肥温泉へと向かった。
18時頃到着した。もうだいぶ暗くなっていたが海の上に広がる夕日を見ることが出来た。
近くにはスーパーAokiがあったので入る。絵画推しのこのスーパーは伊豆半島を牛耳っているのかのようによく見かける。じゃがりこを買う。
晩飯はこじんまりとした味処で海鮮丼(1700円)を頂く。おかみさんから「デザートだよ」とみかんを貰う。普段ならこういう店には入らな
いし、1700円もするものは注文しないけど、この日は躊躇わなかった。普段と違う自分になれるのも旅の醍醐味。
この味処の目の前にあるのが、この日の宿「土肥ふじやホテル」である。
朝から、セットにウインナーが含まれてない等誤算続きで疲れ切っていたので、チェックインしたらこの旅館の和室を堪能する前にすぐに温泉に浸かり、フルーツ牛乳を飲み、お布団にくるまり眠ってしまった。
■2月13日
午前3時ごろに目覚める。おはようございます。
お茶を入れて飲みつつ、「レオナルドのユダ」を読み進める。レオナルド・ダ・ヴィンチに夢中になる。6時半になるともう一度温泉に入る。展望台から外の風景を眺める。真っ暗闇だった昨夜と違って綺麗な海と町並みが一望できた。
8時にチェックアウト。9時までは周りを散策する。「世界一の花時計」というものがあった。9時。レンタサイクルで自転車を借りる。ルイガノという車種らしい。一人旅でレンタサイクルを利用するのは初めてだ。
恋人岬を目指して自転車を漕ぐ。
グーマによると徒歩で1時間半かかるらしいから自転車だと40分程と予想する。海沿いの道を自転車で走るのが気持ちよくてついつい顔がにやけてしまう。海はとても澄んでいて綺麗だ、その奥に富士山が大きく見える。
しかしサイクリングが気持ちよかったのは最初だけ。
恋人岬に向かうまでの7kmの道のりがずっと登り坂だった。必死に漕ぐ、必死に漕ぐ、必死に漕ぐ。標高が高くなり景色は綺麗だがとてもしんどい。
そうして予定より遅れ1時間程かけて恋人岬に到着。観光客も割といたが、恋人岬という名前だけあって男女二人組ばかりである。ここに単身でやってくる僕の度胸を褒めてほしい。
3回鳴らすと恋人との愛を海に誓う、という鐘があった。多くのカップルがそれを鳴らして愛を海に誓っていた。
なので僕も慣らすことにした。周りの憐れむ目など気にしない。たった一人の場合は自分への愛を誓うことになるのだろうか。 カランコロン、カランコロン、カランコロン。
疲れたので恋人岬の喫茶店で休むことにした。わさびソフトクリームとレモンスカッシュを注文する。
また自転車で戻る。
帰りはひたすら下り坂でとても楽だ。あっという間に土肥まで戻ることが出来た。
土肥金山という施設の中の食堂で「イズシカ丼」を食べる。伊豆の鹿のお肉を使っていて高たんぱくでヘルシーらしい。
土肥金山の周りにはまだ2月だというのに桜が咲いていた。
食後に自転車を返却した。
疲れていたので帰る。良い景色を見られて満足だ。サイクリングも気持ちよかった。
バスに乗り込み、修善寺に戻り、三島駅まで戻り、ホームで新幹線を待っていた。そこでスピードを緩めず三島駅を通過していく新幹線の迫力に死を感じた。たった数メートルの距離に僕の人生を一瞬で終わらせるものがある 。そしてその乗り物を利用している業のようなものを感じながら帰路に着いた。